「ダンケルク」


アマゾンビデオで「ダンケルク」を見ました。以下はちょっとネタバレ感想なので、ご注意を。。。
映画ダンケルクは第2次大戦でフランスのダンケルクに孤立したイギリス軍40万人の大撤退作戦の史実をもとに描いた戦争映画です。
監督はクリストファー・ノーラン。この監督は出世作「メメント」で物語の終わりと始まりを逆転させる大胆な時間逆行映画を作るなど、映画の中で大胆な時間操作を得意とし、映像の美しさや物語の緻密さなども評価され、バットマンシリーズダークナイトの3部作なども物した天才肌の監督かと思います。今作が初めての実話映画で、また可能な限りCGIを使わずに製作されたとのこと。
初見では異常なほどに時制が前後して脈絡なく物語の断片が配置されているようで、話がよくわからなかったので、ノーラン大失敗かよ?と思ったのですが、もう一度見直すことにしました。
すると最初は適当にに見ていた冒頭に、
ダンケルクの海岸の2等兵のシーンに「1.THE MOLE one week」(1.防波堤 1週間)、
イギリスから小さな民間船で救出に向かう親子「2. THE SEA one day」(2.海 1日)、
ダンケルクに向かうイギリス空軍パイロット「3. THE AIR one hour」(3.空 1時間)
という文字がつけてあったのです。それを頭に入れてみてみると、この映画が何をしたかったのかがわかってきたのです。
この映画の105分の中で、パイロットの1時間と、ボートの親子の1日と、二等兵の1週間が同時に始まり別々のスピードで進行して、並行して進んで同時に終わるようになっています。そして三者はある瞬間に同じ場所と時間にいて、奇跡的な救出劇に参加しているのです。
それまでのそれぞれに起こった色々な出来事が時間と場所を調整して3者は偶然そこに居合わせてお互いを助けている。歴史には残らない小さな救出劇でも奇跡的なことが起こっていて、他の、人が出会って起きた色々なことが同様に奇跡的な瞬間なのだということを表現しているのだと思います。
それと、映画の24分ごろに、キリアン・マーフィー扮する謎のイギリス兵が沈没した輸送船の船尾に座っているのを、ボートの親子に助けられます。彼は異質な存在な気がしますが、なんと45分ごろにまだダンケルク側にいて、手漕ぎボートの指揮を執っていて、魚雷に襲われた船から脱出して泳いでいる2等兵を置き去りにする命令をする人物としても登場しています。嫌な奴ですが。彼の役割は、冒頭の文字で気がつかなかった人のために、時間がずれた映画であることを知らせるヒントなのではないかと思います。
また、本筋とは関係のない違和感のある登場人物は他にもいます。毛布を配っていた盲目の老人(最初に毛布を渡した人には、目も合わさなかったと思われているが、次の二等兵の顔の触り方で盲目であることがわかる。勘違いの象徴?)。防波堤で寝過ごした2等兵(焦らなくても逃げられた奴もいた、運の象徴?)。彼らも何かのサインかシンボルのように思えてなりません。
ノーラン監督の映画はメインの謎の他にも色々な謎を仕掛けてあるので、見終わった後にじわじわと思い出して、また見たくなるように作ってある気がします。今回も結局はまって4回ぐらい見てしまったのでした。