何度も見ちゃう映画

テレビで再放送をやっていると何度も見てしまう映画があります。
「タクシードライバー」とか「エイリアン」「遊星からの物体X」とか。
今回WOWOWで見た「フランティック」もその一つ。
「フランティック」は1988年制作のアメリカ映画。監督はロマン・ポランスキー。主演はハリソン・フォード。音楽はエンニオ・モリコーネ。

学会に出席するために妻を伴ってパリを訪れた外科医リチャード・ウォーカー、ついたばかりのホテルの部屋でシャワーを浴びている間に妻が消えてしまいます。シャワー中に妻が出ていた電話、ホテルの裏路地に落ちていた妻のブレスレットなどから、誘拐されたと確信して、ホテル、警察、米国大使館などに助けを求めるのですが、妻が浮気相手と逃げたのだろうと誰も親身になって取り合ってくれません。なんとなく怠惰なお国柄を思い知らされ、フランス語が全く話せないリチャードは一人、妻の奪還のために細い糸をたぐって奔走することになるのです。
巻き込まれ系のお話は、主人公の探索に付き合う感じで事件の全体像がわかって行くようになっていて、空港で取り違えられたトランク、中に入っていた「デデ」の電話番号のメモなどを頼りにひどい目に遭いながらトランクの持ち主不良少女ミシェルを見つけ出します。勝手気ままなミシェルと堅物のエリート外科医の凸凹コンビの探索行が始まると物語が動き出します。
この映画が好きなのは、ちょっとしたシーンも妙に小粋に作り込んである感じが理由かもしれません。例えば探し当てたデデの部屋。ドアノブが壊れていて、ドアを押すと開いてしまいます。普通なら部屋に入るのはためらいますが、中にいた猫が出ようとするので、足で制してドアを閉めると、、、ほらもう入っちゃってる。そして部屋の奥にはデデの死体が。。。結局猫は出て行ってしまいます。  他にも、スーツケースを抱えて急傾斜の屋根伝いにミシェルの部屋の天窓から部屋に入ろうとするが、高級なクツがツルツル滑って、窓枠にベルトを引っ掛けてスーツケースの中身を屋根にぶちまけてしまいます。裸足になろうと、クツを脱いで、靴下を中に入れて、、、それも屋根を滑り落ちて行って、、次から次へ何もかも無くして行く男の悲哀とダブって面白い場面です。
タイトルとエンドタイトルの音楽はエンニオ・モリコーネ、フランス風味の傑作。タクシー、クラブ、電話をかけたアメリカの実家でもグレイス・ジョーンズの名曲がかかっています。僕はこの映画でグレイス・ジョーンズを知ったのかもしれません。
監督のロマン・ポランスキーはポーランドの血を引くユダヤ系フランス人、第2次大戦の虐殺で母を失い、自らも逃亡生活、映画で成功してアメリカに移住するも、淫行疑惑でアメリカに帰れなくなり、フランスに亡命。2人目の妻はシャロン・テート(3人目はこの映画のミシェル役のエマニュエル・セニエ)というめちゃくちゃな人生の人ですが、作る映画はかっこいい。
監督と脚本家共作のオリジナル脚本のこの映画で、フランス人は怠惰、米大使館員は役立たず、主人公のアメリカ人は徹底的にひどい目に遭いますが、なんとなく監督の複雑な思いが込められているように感じます。「フランティック」は気が狂うといった意味らしいですが、フランはフランスにかかっていそうだし。
ところで。最初と中盤と最後にゴミ収集車のシーンが結構目立つ形で入っているんだけど、何を意味しているのか分からないのです。観光都市のパリの裏側ってことかな?。