「女神の見えざる手(原題 Miss Sloane)」をアマゾンのレンタルで見ました。政治サスペンスのスッバらしい一作。
銃規制法案をめぐり。規制派に立った敏腕ロビイスト、エリザベス・スローンと擁護派のロビイスト会社の虚々実々の戦いのドラマです。
ロビイストは政府外の一般社会にいながら、様々な方法で政府の決定に影響を与えて政治を変えようとする人たちのことで、かつては同一の目的を持つ人たちが集まって団体を作り議員に圧力をかけたり利害調整などをしていましたが、近世では事業化し、専門家のロビー会社が企業や団体の依頼を受けて活動することが増えてきました。これにより一般の倫理に反する活動をしたり、巧妙な非合法な方法が使われたりする問題が起こっているとのこと。
エリザベス・スローンはアメリカの大手ロビイスト会社の社員。どんな方法を使ってでも勝つ凄腕の彼女は業界でも知られた存在です。
ある日、強力な影響力と資金を持つ銃擁護団体からの「無関係を装って女性団体を立ち上げ銃擁護の思想を吹き込めないか」という依頼を一蹴し、キャリアを投げ打って、勝ち目がないと言われる戦いをするため、銃擁護派と対立する銃規制側のロビー会社に移籍します。
彼女はディベート能力に優れ、切れ者で、とびきりの策士ですが、ほぼ睡眠もとらず、バッグには覚せい剤。プライベートではエスコートサービスの男娼を買っていて、まるで勝つことにのみ固執する社会病質者のようにも見えます。スタッフがひた隠してきた秘密を暴露してしまったり、個人行動が多くなり移籍した会社の中でもスローンは孤立を深めて行きます。
彼女の存在に危機を感じた銃擁護派のロビー会社は彼女の過去の案件の非合法な手段を暴き、偽証罪で懲役刑を科して葬ろうと、政府の聴問会を開かせます、この聴問会がスローンと敵との最後の奥の手をさらし合う一騎打ちの戦場となるのです。
彼女はこの銃規制の案件を、「倫理的な判断」「挑戦に心躍った」と言いますが、彼女の過去に銃関係の事件があったのが動機ではという問いには、早めに話をはぐらかしているように見えるのです。また、突っ走ってしまう自分がスタッフの人生を壊してしまわないように配慮しています。意外に良い人かも、並外れた能力に突き動かされている正義の人かもとも思わされました。
脚本は目が離せないマシンガントーク、策略が身を結んで議員が心変わりするシーンの快感、そしてスローンを演じたジェシカ・チャステインの非情な態度の中にほのかに人間味を感じさせる演技も素晴らしい映画です。
しかしこの映画、全米3館で限定公開され5万9797ドルと興行的には大敗したようです。もしかしたらこの映画自体が銃規制ロビーと思われて、銃ロビーの圧力がかかったのかもと、なんか皮肉なことを考えてしまいました。ミス・スローンの続編が見たかったけど無理かなぁ。。。