YOUTUBEとVIMEOに動画をアップしました。
Based on the movie “The Killing”directed by Stanley Kubrick
Music Space jungle by NICOCO
https://www.jamendo.com/track/1077950/space-jungle
昔の新聞のような網点表現(ハーフトーンスクリーン)で動画を作りたいと思い、たぶん昔のフィルムノワールといわれるモノクロの犯罪映画が合いそうだと思いネットを漁っていたら、大巨匠スタンリー・キューブリックの映画「現金に体を張れ(The Killing)」がパブリックドメインになっているのを見つけました。
「現金に体を張れ」は、スタンリー・キューブリック監督のハリウッド映画第1作、1956年製作のアメリカ映画。僕も昔一度、テレビの洋画劇場で見たおぼろげな記憶がありました。
以下の文章も、今回作ったビデオもネタバレしちゃってますが、昔の有名な作品だし、本当に面白い部分は本編の中にある複雑な因果や皮肉な展開のパズルのような構成や俳優の演技、映像表現の緻密さなわけで、ぜひ原作の映画を見る機会になればと思います。
「競馬場強盗計画」の首謀者ジョニー、計画の資金提供者マーヴィン、競馬場の窓口係ジョージ、競馬場のバーテンの マイク、警官ランディ、この5人が主要メンバー。ほかに銃マニアのニッキーが狙撃手、レスラーのモーリスが乱闘騒ぎを起こす役として雇われ、競馬場で騒ぎを起こし混乱に乗じて、人を殺さずに現金保管室を襲う、秒単位まで綿密に計画された犯行が決行される。しかし意外なほころびから、彼らの運命は狂い始める。というお話。
名作映画のリミックスを作るのは恐れ多いことだとは思いますが、実際作業をしてみると単に鑑賞するだけでは見逃してしまいがちな事を、時間をかけて1カットずつ細かく見てゆくことになり、様々な再発見をする機会でもある事が解ってきます。
撮影技法では、見事なパン撮影が目立ちました。固定カメラを横に回す撮影方法ですが、一般的に広い景色を引きのない場所で説明するのにぐるっと見回す感じで使うのですが、画面に役者を入れてそれを追うように動かすことで、十分に物語の一部として印象的な映像を作っている場面がたくさんありました。
バーテンのマイクがロッカールームから出てきて、現金を搬入するガードマンたちににこやかに会釈、一瞬保管庫の中が写ってドアの閉まるのに合わせてパン、廊下の奥に犯罪者の顔になったマイク。
犯行が終わって、待ち合わせた部屋でジョニーが現金を持ってくるのを待つメンバー。予定時間を過ぎて一人神経質に歩き回る窓口係ジョージ彼を追うようにパンしながら一人ひとりの顔を映して、、バーテンのマイクの額にバンドエイド。
重症を負ってドアから出てきて、道を渡り車で走り去るジョージ。カメラ前に、遅れて現金を運んできて、異変に気付きドアの中とジョージの状態を探るジョニー、それを後席からパン撮影。
それと、競馬場の馬券売り場を横切るドリー(カメラをレール上を走るドリー車に乗せて移動)撮影、メンバーが位置についているか確認しながら、群衆の中を横切るジョニー。覚悟を決めて乱闘の口火を切る時間を待つレスラーのモーリス。犯行を終えて混乱の中、出口に向かうジョニー。印象的なカットの連続なのです。
俳優さんも皆さん良い顔、良い演技ですね。
窓口係ジョージ。 全てをぶち壊してしまう小男、小心者でプライドが高く、妻との辛辣なやり取り、日々のストレスで爆発寸前な感じがよく出てますね。演じたのはエライシャ・クック・ジュニア。出演作も多くうまい俳優さんだったのではないでしょうか。妻とのやり取りのシーンでは妙に無表情で、後年の顔の似ているジャック・ニコルソンのシャイニングの演技をを思い起こさせます。1995年5月18日(91歳没)とのこと。
主犯のジョニー。 普段は感情を顔に出さないタイプ、知性と暴力のバランスをよくわかっている感じ、恋人のフェイに対してだけ本心を表す感じ。最後のガックリ顔がささりました。俳優はスターリング・ヘイドン、196cmの高身長だったそうです。「博士の異常な愛情~ 」「ゴッドファーザー」にも出演。第2次大戦中は諜報機関に属したり、波乱の人生だったようで、本物感があるんですね。1986年5月23日(70歳没)。
ジョニーの恋人フェイ。 出番は少ないですが、考えてることがすべて顔に出ちゃう人みたいな役柄で、空港のシーンでは再会して一瞬の笑顔が素晴らしく美しいですね。ガチガチにハードボイルドなこの映画の中でたった1輪の花という感じ。コリーン・グレイ、西部劇やフィルムノワールで活躍したようです。2015年8月3日(92歳没)。
元レスラーのモーリス。 ジョニーがチェス道場に勧誘に行く元レスラー。普段は落ち着いた好人物。値段と簡単な役割を聞いて、大きな犯罪計画であることを察知する、実は相当な切れ者。レスラーは馬鹿じゃできないぜ、という見本のような役。演じたのはコラー・クワリアーニ。Nick the Wrestlerというリング名で知られたグルジアのプロレスラーおよびチェスプレーヤーでした。この人も本物なんですね。ロシア生まれらしいのであの独特な英語はロシア訛りなのか?映画中で後頭部を打つ危険な倒れ方をしていたので大丈夫だったのか?と思っていましたが米Wikiで没年がFebruary 27, 1980 (aged 77)となっていたので大丈夫だったみたいです。
みなさんすばらしいですが、窓口係ジョージの妻シェリーの愛人ヴァルを演じていたのは ヴィンス・エドワーズ。1961年に放送が始まった「ベン・ケーシー」に主演として抜擢されて、大躍進した人でした。
リミックスを作るにあたって、まず原作の映画、「The Killing」、英語 字幕なし版をダウンロード。(720X432pixcel23.98fps)ここから使いそうなシーンをピックアップして、 20分ほどに荒く編集したものを書き出し(720X432pixcel23.98fps変わらず)。Adobe After Effectsで網点効果をつけます。網点効果はこちらを参考にしました。
Adobe After Effectsで書き出した網点処理済みのデータ(1920X1080 23.98fps)をPremierに取り込んで時間軸に沿って少しずつ並べてゆきました。初めに網点処理をしたのは、拡大縮小してならべた時に、いろいろな細かさの網点が1画面の中に並んだほうが面白いかと思ったからです。1秒のフレーム数はあまり使った事のない23.98fpsですが、オリジナルの映画もPCで見れていたので、変えずにアップしています。
今回のリミックスも結局物語の軸に沿った、元の映画の短縮版かネタバレ予告編みたいになってしまいました。本当は時間軸に関係なく、多重合成を使ったもっと不思議な感じのアート的なものも作ってみたいのですが、それはまた今度。。。
原作の映画はこちら
https://archive.org/details/thekilling1956
日本語字幕版はこちら
https://www.nicovideo.jp/watch/sm26402554